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青蛙 おまえもペンキ 塗り立てか /芥川龍之介
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好転
先に現状を報告すると、父がいたたまれなくなって母を連れて戻った。
父はそうするだろうと思っていたから、医者を交えての話に参加して
説得し、縛る事になったりしてでも強制的に治療をすすめるべきだと
意見した。例え、治療途中彼女のプライドなりの抵抗が強く、死んでしまうことになっても、治癒の可能性が高い方に賭けるべきというのがぼくの意見だった。



父は結局折れて、そうすると決めたが、やはり彼女をあの環境に置いておくのは耐え切れず、退院手続きもせず連れ帰ってきた。
ぼくに会わせたりするよりもまず二人で落ち着きたいと、そのまま温泉にでも行くと言っていた。
深夜、結局泊まらないと彼女が言うので戻ってきた。
その日も彼女はひきこもったので会うことはなかった。
ぼくと彼女が一緒に居る事は諸刃の剣であるので、
というより、どちらかが壊れる可能性があるため
ぼくは彼女を連れて帰ると聞いた時点で、翌日に帰ることに決めた。


ぼくは6年前あたりの彼女が危篤状態に陥ったのち、痛み止めで錯乱していたときも、自分の自衛のために彼女を捨てて帰った。
今回も同じだ。
ぼくは自分のスタンスを守るためなら彼女のことは簡単に打ち切れる。
ぼくには彼女より大切に守らなければならないものがある。責任がある。
あのときと同じように
彼女の死を意識したし、今回彼女がおかしくなったのはぼくが実家に帰ったからだし、
それでもなおかつ、彼女に死と隣り合わせの荒療治を施そうなどと言ったのもぼくで、母親以上にひどいのはぼくのほうだ。
冷徹。


彼女がおかしくなったのは、別にぼくの性癖だとかそういうのがバレてというのではない。ただ、ぼくは彼女のコピーだから、対峙すると普段は深層に押し込まれている部分が、ふいに飛び出てくるんだろう。
ぼくを見るだけで。


まぁ、ぼくも彼女だけがぼくを狂わすことができるのだけれど。
恋人とかならどうなのかという話は今はおいといて。



パンドラの箱っていうのはね、
彼女が持ってるもので、開けるとおかしくなっちゃうもの。
おかしくなるとは彼女は知らないのだろうけど
彼女は自分が箱を持ってることは知ってる。
そこに世の中の摂理が隠されてると思ってる。
前回錯乱したときに、ぼくにその秘密を打ち明けた。
たぶんあの時、彼女も初めてその箱を意識したんだろう。
錯乱した世界観の中で。あるいはあの世との境界線をうろついていた時に。
パンドラの箱っていうのは、実際にギリシャ神話用語らしい。さっき調べたら。
彼女がそれを知ってるかは別として、
ただ、なかなかその意味も符合していて、意味深なわけだけれども
今回彼女のその箱が開いてしまったわけだ。
ぴゅーぴゅーぴゅーぴゅー
飛び出してきたんだろう。


だけど、箱はなぜか、無事に閉じられた。
神様、あなたがしたの?
だってぼくには、もう閉じられる可能性はないと思ってたのに。
こんな、一晩で状況が180度くらい変ったりって、ある?
精神病院はね、普通の病院みたいに内科的治療とかってできないの。
いつものように数日間点滴をして衰弱を治すようなこと、できないの。
牢屋みたいなところで
名前を書いた服を着て、紐など危険物を一切排除された空間で
お友達がたくさん自由に叫んだり歌ったりしてる中で
彼女はハンストし、弁護士を呼べだの何だのと、
プライドに賭けて、戦っていたらしいから、治療どころではなかった。
怒りのパワーのおかげなのかな。
怒りは彼女の原点みたいなものだし。



何度目かの今生の別れを意識していたのに
数日前の普通の彼女がぼくに話しかける。
もちろん同じではない、おかしいところがあるわけでもない
彼女は彼女なりに理解し、入院してもいいと言った。
ぼくが帰ったらすぐその日のうちに入院しちゃうかも、と。
だから心配いらないと言っていた。
一応ね、仲は悪くないんだよ。ぼくが苦手なだけで。
ちっちゃい頃は大好きだったしね。当たり前にさ。



ねぇ、だからそれは神様のせいなんでしょ?
あなたがそんな素直に受け入れるはずないじゃない。
素直なんてあなたの辞書にはないはずだよ。
いくらひどい仕打ちにあいまくったからと言って。
彼女かぼくになのか、どちらへの救済なのかわからない。
いや、
ただ一人になってしまう父のためなのかもしれないな。
ぼくはだってどうでもいいことだから。



よかったよ、
父が一人にならずに済んで。
父は、それだけは、怖れてやまなかったようだから。
そうだとしたら、神様に感謝するよ、ぼくは。



そんなわけで、ぼくは帰ってきた。普段の生活に。
変なの。
いろいろ、わからないこと、だらけだ
厄年みたい。いろいろ、ありすぎて、よく、わからない。


母さん、
きっとお互いパニック障害なんだろうね。
ぼくは平気なんだけど、あなたも乗り越えられると、いいね。 /ナオ
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